初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
「連絡先は分かるの?」
杏里が身を乗り出してくる。

「……一応」
理世はカップのふちを指でなぞりながら、小さく答える。

「じゃあ、また会う約束しなよ!」
あまりに即答すぎて、理世は思わずむせそうになる。

「で、でも……」
視線を泳がせる理世に、杏里はさらに畳みかける。

「このタイミングを逃したら後悔するよ。今! いま!」
声をひそめながらも、その迫力に理世は笑ってしまった。

「……う、うん……」
曖昧に頷きながらも、心臓はどくどくと早鐘を打っている。

スマホを握りしめる手のひらに、じんわりと汗がにじむ。
“久しぶりに会えて嬉しかった。また、ゆっくり話せたら”
そんな短い一文を打っては消し、また打っては消す。

結局、送信ボタンを押せないまま、画面を閉じる。
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