君が好き
ナンパ男
私の名前は杉谷ユカリ。
大学に通っている21歳だ。
大学生ブランドを引っ提げて彼氏を作り、それなりに充実しているつもりだった。
だけれども、幸せというやつは長くは続かないらしい。
「え…?嘘。」
それは突然の出来事だった。
スマホの画面に並ぶ、別れてほしいの文字。
送り主は私の日々の充実の大部分を占めてくれていた彼氏でしかなかった。
思わずスマホをベタに地面へ落とす。
それくらいの衝撃が身体中を駆け巡ったのだ。
こんなことドラマの一場面でしかないことだと思っていた。
だからまさか、自分にもこういうことが起きるなんて思いもしなかったのだ。
「嘘でしょ。これが振られるってことなの…?」
何度見返してもスマホの画面には別れてほしいの文字。
消せないメール文を見て何度もため息をついた。
彼氏…いや、元彼はカズキという名前だ。
カズキは同じ大学の先輩でコンパをきっかけに知り合った人。
ドライブが好きな人でよくデートをする時は連れて行ってくれてたっけ。
今思えば、私がドライブ好きになったのはカズキ先輩のおかげだった。
風をきりながらカズキ先輩の横顔を見つめるのがドライブで一番好きな瞬間だった記憶。
だけれども、もうカズキ先輩の隣を歩く資格も乗る資格も私にはもうないのだ。
それだけがやけにハッキリしていて、スマホの画面にうつっている別れてほしいの文字まで数秒ごとにハッキリしていくように見える。
まだ現実を受け止めきれない。
つい最近までカズキ先輩とプールデートだってしていた。
カズキ先輩と一緒に並んでプールに入って暑い夏の日差しでぬるま湯になった水面に足を踏み入れる。
水の生ぬるさとカズキ先輩の体温の熱さを少しずつ感じながら、ゆっくりと私たちはプールに入った。
周りにはビートバンで泳いでいる子たちもいて、少しプールの水には波ができていたっけ。
プールの水の波と波がぶつかった時、少しそこに割れ目ができてそれが面白かった私。
そんなのを見つめていたらカズキ先輩は暖かく私のことを見守ってくれていた。
優しい優しいカズキ先輩。
だけどもう、そのカズキ先輩は私の彼氏じゃないんだ。
それだけがずっとハッキリしてるのにまだ受け止めきれない。
だって突然、別れてくれなんて言われたから無理もなかった。
しかもメールでのみの連絡。
たったメール1件で済ませられるほどの仲だったんだろうかとさえ思った。
この今までの積み重ねはなんだったんだろう。
それとも今までの積み重ねは1件のメールでぶち壊せてしまうほどの薄っぺらなものだったんだろうか。
私はスマホの画面をもう見たくなくて思わず電源を切った。
そしてどこまでも走り去ってしまいたくなり、家を出る。
そうして街へと走った。
しばらく走ると街が見えてきてそこには相変わらず多くの人がいて、そこだけはなにも変わっていない。
だけれども、もうカズキ先輩と一緒にこの街を歩くこともないんだろう。
そういうことさえもハッキリとしてしまうから少し嫌になった。
「はあ…。」
思わずため息をつく。
すると近くでこんな声がした。
「そこの彼女ー!今って暇してる?」
明らかにカズキ先輩ではない男性の声だった。
カズキ先輩の声は落ち着いていてこんなにも元気な感じじゃない。
気づけばカズキ先輩とその見知らぬ男性の声を比べてしまう私がいた。
それくらい私はカズキ先輩のことをまだ引きずっているらしい。
ただそのまま、女々しい私でいることが私の中では我慢ならなかった。
だから私は声のした方へ視線を向ける。
するとそこにはとてつもないイケメンがいた。
「え…超カッコいいんですけど。」
そのイケメン男性は赤いスポーツカーに乗ってこちらを見つめていた。
クッキリとした大きな目にスッとした鼻筋、そして日焼けした少し筋肉質な肌。
男っぽい風貌だが明らかにイケメンだった。
車のドリンク置き場にはコンビニのアイスコーヒーがセットされてある。
正直、このイケメンがストローを通してアイスコーヒーを飲むのかと思うとストローになりたいくらいだ。
私はストローのように続く道を歩いてそのイケメンの乗るスポーツカーに近づく。
相手が私に気づいた時、お互いの視線が絡み合う。
そのイケメンは勝ちを確信したのか余裕たっぷりの笑みでスポーツカーから出て来た。
程よい筋肉を携えた手足が夏の日差しに照らされてクッキリと腕の血管が強調されている。
そんな彼は手慣れた様子でスポーツカーのドアを開けて私をエスコートする。
「どうぞ、お嬢さん。」
少し艶のある低い声が私をスポーツカーに誘う。
「この人はカズキ先輩とは違う。」
心の中で静かにだけど確実にそう思った。
まだ私はカズキ先輩のことを考えてしまうが、この人のおかげで女々しさを少し脱却できそうだ。
大学に通っている21歳だ。
大学生ブランドを引っ提げて彼氏を作り、それなりに充実しているつもりだった。
だけれども、幸せというやつは長くは続かないらしい。
「え…?嘘。」
それは突然の出来事だった。
スマホの画面に並ぶ、別れてほしいの文字。
送り主は私の日々の充実の大部分を占めてくれていた彼氏でしかなかった。
思わずスマホをベタに地面へ落とす。
それくらいの衝撃が身体中を駆け巡ったのだ。
こんなことドラマの一場面でしかないことだと思っていた。
だからまさか、自分にもこういうことが起きるなんて思いもしなかったのだ。
「嘘でしょ。これが振られるってことなの…?」
何度見返してもスマホの画面には別れてほしいの文字。
消せないメール文を見て何度もため息をついた。
彼氏…いや、元彼はカズキという名前だ。
カズキは同じ大学の先輩でコンパをきっかけに知り合った人。
ドライブが好きな人でよくデートをする時は連れて行ってくれてたっけ。
今思えば、私がドライブ好きになったのはカズキ先輩のおかげだった。
風をきりながらカズキ先輩の横顔を見つめるのがドライブで一番好きな瞬間だった記憶。
だけれども、もうカズキ先輩の隣を歩く資格も乗る資格も私にはもうないのだ。
それだけがやけにハッキリしていて、スマホの画面にうつっている別れてほしいの文字まで数秒ごとにハッキリしていくように見える。
まだ現実を受け止めきれない。
つい最近までカズキ先輩とプールデートだってしていた。
カズキ先輩と一緒に並んでプールに入って暑い夏の日差しでぬるま湯になった水面に足を踏み入れる。
水の生ぬるさとカズキ先輩の体温の熱さを少しずつ感じながら、ゆっくりと私たちはプールに入った。
周りにはビートバンで泳いでいる子たちもいて、少しプールの水には波ができていたっけ。
プールの水の波と波がぶつかった時、少しそこに割れ目ができてそれが面白かった私。
そんなのを見つめていたらカズキ先輩は暖かく私のことを見守ってくれていた。
優しい優しいカズキ先輩。
だけどもう、そのカズキ先輩は私の彼氏じゃないんだ。
それだけがずっとハッキリしてるのにまだ受け止めきれない。
だって突然、別れてくれなんて言われたから無理もなかった。
しかもメールでのみの連絡。
たったメール1件で済ませられるほどの仲だったんだろうかとさえ思った。
この今までの積み重ねはなんだったんだろう。
それとも今までの積み重ねは1件のメールでぶち壊せてしまうほどの薄っぺらなものだったんだろうか。
私はスマホの画面をもう見たくなくて思わず電源を切った。
そしてどこまでも走り去ってしまいたくなり、家を出る。
そうして街へと走った。
しばらく走ると街が見えてきてそこには相変わらず多くの人がいて、そこだけはなにも変わっていない。
だけれども、もうカズキ先輩と一緒にこの街を歩くこともないんだろう。
そういうことさえもハッキリとしてしまうから少し嫌になった。
「はあ…。」
思わずため息をつく。
すると近くでこんな声がした。
「そこの彼女ー!今って暇してる?」
明らかにカズキ先輩ではない男性の声だった。
カズキ先輩の声は落ち着いていてこんなにも元気な感じじゃない。
気づけばカズキ先輩とその見知らぬ男性の声を比べてしまう私がいた。
それくらい私はカズキ先輩のことをまだ引きずっているらしい。
ただそのまま、女々しい私でいることが私の中では我慢ならなかった。
だから私は声のした方へ視線を向ける。
するとそこにはとてつもないイケメンがいた。
「え…超カッコいいんですけど。」
そのイケメン男性は赤いスポーツカーに乗ってこちらを見つめていた。
クッキリとした大きな目にスッとした鼻筋、そして日焼けした少し筋肉質な肌。
男っぽい風貌だが明らかにイケメンだった。
車のドリンク置き場にはコンビニのアイスコーヒーがセットされてある。
正直、このイケメンがストローを通してアイスコーヒーを飲むのかと思うとストローになりたいくらいだ。
私はストローのように続く道を歩いてそのイケメンの乗るスポーツカーに近づく。
相手が私に気づいた時、お互いの視線が絡み合う。
そのイケメンは勝ちを確信したのか余裕たっぷりの笑みでスポーツカーから出て来た。
程よい筋肉を携えた手足が夏の日差しに照らされてクッキリと腕の血管が強調されている。
そんな彼は手慣れた様子でスポーツカーのドアを開けて私をエスコートする。
「どうぞ、お嬢さん。」
少し艶のある低い声が私をスポーツカーに誘う。
「この人はカズキ先輩とは違う。」
心の中で静かにだけど確実にそう思った。
まだ私はカズキ先輩のことを考えてしまうが、この人のおかげで女々しさを少し脱却できそうだ。