桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて

第8章 命を狙う影

その日、いつも身の回りを世話してくれる雪如が、熱を出して寝込んでしまった。

「ご無理をなさらず、数日は休んでください。」と宦官が告げ、代わりの侍女が遣わされてきた。

「本日より、しばらくお仕えいたします。」

深々と頭を下げたその侍女は、年も雪如と変わらず、物腰は柔らかだ。

「普段は誰についているの?」と尋ねると、彼女は少しだけ微笑んだ。

「いえ、私はまだ後宮に上がって日が浅く……決まった妃様についてはおりません。」

そう言いながらも、所作はてきぱきとしていて、茶の支度も衣の整理も淀みない。

(……来たばかりにしては、随分慣れているわね。)

そう思いながらも、その働きぶりに思わず頬が緩む。

「雪如は心配ね。」

「ええ、でも二、三日もすれば良くなられるでしょう。」

会話も自然で、気づけば笑い声がこぼれていた。

(悪い人ではなさそう……)

いつしか私は、この新しい侍女に心を許し始めていた。
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