桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
その日、煌の夜伽は安妃に決まったと聞かされた。

「今夜は一人寝するしかないわ。」

雪如の代わりに仕える侍女がそう告げる。

どうやら皇后様の進言によるものらしい。

(……やっぱり、皇后様の方が上なのね。)

煌が夜中に私の元へ忍んで来ることは、もう許されないのだ。

寂しさを抱えたまま寝台に横たわると、不意にふわりと甘い香りが漂ってきた。

「これは……?」

思わず問いかける。

「眠りをよくする香りです。」

侍女がにこやかに答えた。

ほっと胸を撫で下ろしたものの、妙に強い香りが鼻腔にまとわりつく。

(……いつもよりも香りが濃いような……)

瞼が重くなる。

頭がぼんやりして、体の力が抜けていく。

「どうぞ、ごゆっくりお休みくださいませ。」

侍女の声が、やけに遠くに聞こえた。

――その夜、私は深い眠りに囚われた。
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