桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「どうなさいました!」

司馬陽が寝台に駆け寄り、私の顔を覗き込んだ。

「息が……苦しくて……」

掠れた声で訴えると、司馬陽の瞳が大きく揺れた。

「えっ……⁉」

彼はすぐさま立ち上がり、廊下へ飛び出す。

「医者を呼べ!」

まだ部屋には、あの甘い香りが濃く漂っていた。

私は必死に声を絞り出す。

「司馬陽……その香りを……嗅いだら……」

ハッとした司馬陽は、すぐに袖で鼻口を覆った。

「これは……?」

「侍女が……持ってきたの……」

「侍女?」

鋭い声が響いた瞬間、戸が開き、医官が数人飛び込んで来た。

「直ちに診察を!」

脈を取り、胸を押さえる私を確かめると、医官の顔色が変わった。

「これは……薬に異物を混ぜております!」

部屋中に緊張が走った。

(やっぱり……これはただの眠り薬なんかじゃなかった……!)
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