桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
呼吸を楽にする薬を与えられ、翌朝にはようやく体を起こせるようになった。

けれど、煌の怒声が後宮中に轟き渡った。

「誰だ! 小桃に毒を嗅がせたのは!」

私が訴えた侍女の姿は、どこにもなかった。

彼女を連れて来たという宦官でさえ、影も形も見えない。

「探せ! 皇太子である俺の寵姫に手を出すなど、断じて許さぬ!」

怒りに燃える煌の声に、兵士や宦官たちが青ざめて散っていった。

後宮の奥から奥まで、昼夜を分かたず探索が行われる。

やがて――

「見つかりました!」

兵士の叫びが響き、全員が息を呑む。

連れて来られたのは、震える侍女だった。

顔は青ざめ、必死に俯いている。

「申せ!」

煌の鋭い声が飛ぶ。

「誰の命で小桃に毒を盛った!」

重苦しい沈黙が広間を覆った。

その侍女の唇が、ゆっくりと開かれようとしていた――。
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