桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「何事です!」

澄んだ声とともに、広間へ駆け込んできたのは皇后・紅蓮だった。

「これは……!」

倒れた侍女を目にして、その表情が凍りつく。

「煌明。わたしのいない間に、侍女に折檻を?」

「妃の命を狙った者だ。俺が直に裁く。」

煌の声は怒りに震え、誰も近づけぬほどの気迫を放っていた。

「お待ちください。」

紅蓮様は裾を翻し、侍女の前に座り込む。

「後宮で起こったことは、すべてこの私の責任です。」

毅然と顔を上げ、その瞳は揺らがなかった。

「責めるなら、この私を責めてください。」

広間はざわめきに包まれた。

皇后自らが責任を負うと言い切る姿に、侍女たちも宦官も息を呑む。

私は息を詰めたまま、その光景を見つめていた。

(皇后様は……侍女を庇っている? それとも――)

煌の視線が紅蓮を鋭く射抜く。

「紅蓮……おまえが背後にいるのか。」

空気が凍りつく中、皇后の唇がわずかに開かれた。
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