桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「必ず……犯人は突き止めます!」

紅蓮様の声は張り詰めていた。

「その言葉、忘れるな!」

煌は怒気を隠さぬまま広間を後にし、その背を誰も止められなかった。

私はただ、立ち尽くすしかなかった。

「小桃。」

紅蓮様が静かに歩み寄り、私の前に立った。

「あなたを危険にさらしたこと……許してちょうだい。」

意外な言葉に、胸が揺れる。

皇后という立場であれば、頭を下げる必要などないはずなのに――。

「あなた様が心を痛めることではありません。」

私は首を横に振った。

「ですが……」

紅蓮様の瞳には、一瞬だけ迷いが宿った。

それは王族の威厳をまとう皇后ではなく、一人の女性としての素顔のように見えた。

(この方もまた……煌を想っているのだろうか。)

胸に広がる痛みを、私は押し隠すしかなかった。
< 114 / 148 >

この作品をシェア

pagetop