桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
しばらくして、広間に一人の妃が引き立てられてきた。

「私はやっていません!」

声を張り上げるのは――安妃だった。

「毒を盛った侍女が吐いたのです。あなたの命だったと。」

宦官が冷然と告げると、安妃は唇を噛みしめる。

「そんな……あんな侍女の言葉を鵜呑みにするのですか!」

顔を上げた彼女の目は必死に揺れていた。

「信じて下さい! 皇太子様!」

次の瞬間、声色を変えて、安妃は煌に縋るように手を伸ばした。

「私は殿下を心からお慕いしておりますの。どうか……どうかお許しくださいませ。」

その甘えた声音は、広間の空気をさらに張り詰めさせた。

私は胸を抱え、背筋に冷たいものが走る。

(……この人が。本当に、私の命を狙ったの?)

煌の瞳は鋭く安妃を射抜いていた。

その表情は、もはや一片の情も許さぬように見えた。
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