桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「待って下さい。」

鋭い声が広間を裂いた。

皇后・紅蓮様が進み出ると、全員がひれ伏した。

「侍女の証言のみで断罪するのは、あまりに軽率ではありませんか。」

紅蓮様の言葉に、安妃の肩がわずかに震えた。

「しかし――」

煌が口を開こうとする。

「確かに柳妃を害そうとした者がいることは事実です。」

紅蓮様は静かに言葉を重ねた。

「けれども、その命を下したのが安妃であると断ずるには、証拠が乏しい。」

「証拠不十分、ということか。」

煌の瞳が細められる。

怒りを必死に押し殺しているのが分かった。

「はい。皇太子殿下。ここで誤った裁きを下せば、後宮全体の秩序を揺るがします。」

安妃は、必死に頭を下げながらも、口元にはかすかな笑みを浮かべていた。

私は拳を握りしめ、胸の奥が凍る思いだった。

(……やはり皇后様は、安妃を庇うつもりなのだ。)
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