桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「柳妃様。」

部屋の戸が静かに開かれると、すらりとした影が現れた。

「鄭花林と申します。お見知りおきを。」

息をのむほどの美貌。

金軍の将・鄭家の娘として知られる彼女は、他の妃たちとは違う気品と落ち着きをまとっていた。

「ご懐妊と伺い、お祝いの品をお持ちしました。」

差し出されたのは、精緻な細工の施された玉の簪。

他の妃が顔も見せぬ中での訪問に、私は驚きを隠せなかった。

「ありがとうございます。有難く頂戴いたします。」

頭を下げると、鄭妃は微笑みを浮かべ、静かに告げる。

「どうか……次の夜伽は、私をご推薦くださいませ。」

その一言に、胸が凍りついた。

私の懐妊を祝福するためではなく、次の席を狙っている――。

けれど彼女の眼差しには、敵意よりも「計算」が光っていた。

(……この人は、私を利用しようとしているの? それとも……味方なの?)

答えを見いだせず、私は言葉を失った。
< 124 / 148 >

この作品をシェア

pagetop