桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「まさか……懐妊しても柳妃を側に置くなんて。」

妃たちの囁きが、後宮に広がっていった。

その声を耳にした皇后は、ついに動いた。

「煌明。」

厳かな声で、彼女は皇太子のもとに進み出る。

「夜伽もできない柳妃を、寝所に呼び続ける意味がどこにありましょう。」

煌の瞳が険しく光った。

「そんなことはない。小桃は俺の妃だ。一緒に子の成長を喜ぶことこそが意味なのだ。」

皇后は表情を崩さない。

「ですが、それでは後宮の秩序が保てません。殿下のお心を一人に偏らせては、争いの火種となるだけ。」

そう言って、背後に立つ一人の妃を呼び寄せた。

「鄭妃を、お側に。」

鄭妃――美しく気品に満ち、しかも妬みを見せぬと評判の彼女が、深々と頭を下げた。

煌は黙したまま、小桃の方を振り返る。

その瞳には葛藤が宿っていた。

(……煌。どうか私を捨てないで。)

胸の奥で必死に祈るしかなかった。
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