桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「今は子供を産むことだけを、お考えなさい。」

皇后様は、驚くほど柔らかな声音でそう告げた。

「皇太子様のお子が誕生する――そのことが、私の支えでもあるのです。」

思いがけない言葉に、私は胸をつかれた。

(皇后様もまた……世継ぎを求められる立場だから……。)

「鄭妃もつつがなく夜伽をこなしているようだし、後宮が穏やかなのが一番いいわ。」

皇后様は、まるで母のように優しく微笑んだ。

「はい。」

私はそれ以上、言葉を返せなかった。

「もう、産着も用意しなくては。」

楽しげに語る皇后様の横顔に、安らぎと同時に、得体の知れない怖さを感じた。

(……この方は、本当に私を祝福しているの?それとも……私の子の存在すら、自分の後ろ盾にしてしまうつもりなの?)

優しさと策略が混ざり合う皇后の微笑みを前に、私はただうつむくことしかできなかった。
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