桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて

第10章 桃果の契り

夜半、突如として腹を締めつける痛みに襲われた。

「うっ……ああっ!」

「柳貴妃様!陣痛でございます!」

侍女たちが慌ただしく走り回る。

灯りが次々と灯され、部屋は一瞬にして産屋へと姿を変えていった。

「しっかり息を整えて!」

医師が声を張り上げる。

額に汗がにじみ、私は寝台の柱を握りしめた。

(ついに……この子が……)

その時、戸の外で声が響いた。

「小桃! 小桃!」

煌の叫びだ。

「皇太子様、ここから先はご遠慮を!」

宦官の声が遮る。

だが煌は引き下がらなかった。

「俺の子だ! 小桃と共に生きている我が子だ! どうか無事であれ……」

廊下を行き来する足音が、私の心に届く。

(煌……私、頑張るから。あなたの子を必ず抱かせるから……!)

痛みに耐えながら、私は腹をさすった。

「どうか……無事に……」
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