桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「初産ですから……お産が進むのは、明日になるでしょう。」

医師の声が冷静に響いた。

「そ、そんなに時間がかかるのか!」

煌が声を荒げる。

普段は沈着な彼が、今は狼狽していた。

「柳貴妃様、今はとにかくお体を休めて……」

痛みで息が荒くなり、私は寝台の上で必死に耐えた。

「うっ……ああっ!」

その瞬間、煌が私の手を握りしめた。

「小桃!」

額に汗を浮かべながら、必死に私の顔を覗き込む。

「大丈夫だ、俺がここにいる。どれほど時間がかかろうと、決して離れない。」

力強い声に、涙が滲んだ。

(煌……あなたがいてくれるなら……)

痛みに震える手を、彼の大きな手が包み込む。

その温もりだけが、長い夜を乗り越える力を与えてくれていた。
< 137 / 148 >

この作品をシェア

pagetop