桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「来ます! 今度こそ!」

医師の声に、部屋が一気に慌ただしくなった。

「貴妃様、しっかり息んでください!」

侍女たちが肩を支え、布を握らせてくれる。

「うっ……あああっ!」

腹の奥からせり上がる痛みに、私は全身で叫んだ。

視界がにじみ、汗が滝のように流れる。

「小桃!」

煌が寝台の脇に膝をつき、私の手を握り締める。

「大丈夫だ、俺がいる! 息を合わせろ、ほら、俺と一緒に!」

「ひっ……ひぃっ……」

呼吸が乱れそうになると、煌が顔を寄せて声をかける。

「俺を見ろ、小桃! 君ならできる!」

医師が叫んだ。

「頭が見えてきました! もう一度! もう一度です!」

「うあああああっ!」

全身を振り絞って声を上げると、産声に混じって部屋の空気が震えた。

「――産まれました!」

侍女の声が響いた瞬間、私の胸に力が抜けた。

涙で霞む視界に、煌の瞳が光って見えた。
< 141 / 148 >

この作品をシェア

pagetop