桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
煌は枝に手を伸ばし、迷いなく桃をもぎ取った。

「今日はこれが一番熟れてる。」

そう言って、にかっと笑う。

まるで、この庭の果樹すべてを知り尽くしているかのような自信満々の口ぶりに、私は目を瞬いた。

「ちょっと……勝手に取っていいものじゃないのよ。」

抗議の声は震えてしまう。

煌は気にも留めず、桃をひと口かじった。

果汁が滴り、日に照らされてきらりと光る。

「うん、やっぱり俺の目に狂いはないな。」

彼は満足げに頷くと、もう一つ枝から実をもぎ取って差し出した。

「ほら、小桃の分。甘いのは仲間と分け合わなきゃな。」

手のひらに置かれた桃からは、ふわりと甘い香りが漂った。

「……どうして、そんなに堂々としていられるの?」

思わず漏らした問いに、煌は屈託のない笑みを浮かべた。

「簡単さ。俺はここに、君に会いに来てるから。」

その笑みと声に、胸の奥がじんと熱くなるのを感じてしまった。
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