桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「……変な人。」

思わず口から漏れた言葉に、煌は「そう?」と肩をすくめて笑った。

確かに、変だ。

男性禁制の後宮に平然と現れ、桃をもぎ取っては堂々と食べる。

妃である私に向かって、冗談半分に「皇太子に会わせてやろうか」なんて言う人、他にいるはずがない。

けれど、その無茶苦茶さが不思議と嫌ではなかった。

むしろ……少し、心地よい。

「嘘だよ」なんて軽く言い捨てて去っていった背中を、私はいつまでも目で追ってしまう。

あの人の声の響き、桃をかじる仕草、真っ直ぐに向けられる視線。

――どれも胸に残って離れない。

(どうしてだろう。変な人なのに……気になる。)

胸の奥がざわざわして落ち着かない。

才人の私は、皇太子様と会うことなど望めない。

恋をする資格もない。

そう言い聞かせても、あの煌の姿が脳裏に浮かぶたび、心臓が高鳴るのを止められなかった。
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