桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「煌、お願い……もう来ないで。」

震える声で告げた瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、涙がこぼれ落ちた。

「どうして?」

煌の瞳がまっすぐに私を射抜く。

「私は……皇太子様の妃なのよ。恋をするなんて、許されないの……。」

自分で口にした言葉に、さらに胸が締めつけられた。

次の瞬間、強い腕に引き寄せられる。

「恋してはいけないなんて……誰が決めた?」

低く響く声が耳元に落ちる。背筋が震えるほど近くて、苦しいのに、離れたくなかった。

「煌……」

名を呼ぶだけで、涙が頬を伝っていく。

彼は優しく髪を撫で、そして耳元で囁いた。

「また来る。君に会いに。」

言い置いて、何事もなかったかのように部屋を後にする背中を、私はただ呆然と見送るしかなかった。

期待するなんて、どうかしている。

そう言い聞かせても、次に戸を叩く音を待ってしまう自分が、何より恐ろしかった。
< 21 / 148 >

この作品をシェア

pagetop