桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして夕暮れの光が部屋を赤く染めても、煌は私を抱きしめたまま離れようとしなかった。

「……煌、いいの? 帰らなくて。」

問いかける声は震えていた。

「帰りたくない。」

彼の腕がさらに強く私を包む。

胸が熱くなり、私も同じように抱きしめ返す。

「……帰って欲しくない。」

もういい。皇太子様に会えないのなら、せめてこの人のものになりたい。

理性を超えた想いが、唇から零れ落ちた。

「煌……抱いて。」

驚いたように瞳を見開く彼に、私は真っ直ぐ視線を返す。

「煌のものになりたいの。」

言葉にした瞬間、胸が張り裂けそうに苦しいのに、不思議と恐怖はなかった。

ただ彼の瞳の奥に、自分と同じ熱を見たから。

「小桃……」

低く呼ばれた名に、体の芯まで震える。

私はそっと彼の手を取り、寝台へと誘った。

すべてを委ねたい――その気持ちだけが、私を突き動かしていた。
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