桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして明け方。

かすかな鳥の声が聞こえ始めたころ、煌は静かに体を起こした。

「……帰るのね。」

私はまだ彼の体を抱きしめていたかった。

温もりが離れてしまうのが、怖かった。

「小桃……俺……」

煌が何かを言いかけ、言葉を飲み込む。

「いや、いずれ分かることだ。」

意味深な一言を残し、彼は視線を逸らした。

「えっ……?」

問い返そうとしたときには、もう煌は寝台から離れていた。

衣を整え、背筋を伸ばしたその姿は、ただの武人にしてはあまりにも気高く見えた。

「また来る。」

短く約束を告げて、煌は部屋を出て行った。

扉が閉まる音が響き、部屋に静寂が戻る。

私は胸に残る温もりを抱きしめながら、深く息を吐いた。

――ああ、私はもう戻れない道に進んでしまったのだ。

禁じられた恋と知りながら、心も体もすでに彼に捧げてしまった。
< 28 / 148 >

この作品をシェア

pagetop