桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして約束通り、次の日も煌は来てくれた。

「……ああ、煌。嬉しい。」

思わず抱きつきそうになるほど胸が熱くなる。

けれど今日は、なぜか彼の姿が違って見えた。

金糸を織り込んだ衣、背に差した刀。

その姿はいつもの飄々とした武人ではなく、堂々たる威厳を纏っていた。

「小桃……」

名を呼ぶ声は変わらず優しいのに、その装いと気配があまりにも高貴で、胸がざわめく。

「ねえ、煌……あなた、本当にただの武人なの?」

震える声で問いかけると、彼はふっと唇を緩めて笑った。

「確かに、今の俺は“金軍”の将だけどね。」

「えっ……⁉」

息を呑んだ。

金軍――皇帝直属の近衛。

最も強く、最も忠義を求められる精鋭。

「まさか……そんな人と……恋なんて。」

信じられずに呟いた声は、かすかに震えていた。

煌は肩をすくめて見せる。

「肩書きなんて関係ない。俺は、ただ小桃に会いたいからここにいるんだ。」

その言葉に胸が締め付けられる。

恋が許されないと分かっているのに。

――心はますます、彼から離れられなくなっていた。
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