桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして今夜も、煌に抱かれる時が訪れた。

寝台の上、私を見下ろす彼の瞳は、どこか切なさを帯びている。

「……煌。」

名を呼ぶと、彼は強く抱き寄せて、低く囁いた。

「小桃……俺を見て。」

「え?」

「肩書きや立場じゃなく、俺という人間を見て欲しいんだ。」

真摯な声に、胸が震える。

私はうんと頷き、彼の頬に触れた。

「あなたが好き……煌、そのものが。」

「俺もだ、小桃。」

唇を重ねると同時に、耳元に熱い吐息が流れ込む。

「小桃……甘い声をもっと聞かせて……。」

その囁きに、全身が支配されていく。

「煌っ……!」

名を呼ぶたび、熱が体の奥で弾け、理性は溶かされていく。

(ああ……私は毎日、この人のために生きている。)

禁忌と知りながらも、彼に抱かれる夜こそが、私の唯一の真実になっていた。
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