桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「そうなの?」

思わず問い返すと、煌はあっさりと頷いた。

「ああ。手当は増えるんだから、素直に受け取ればいいじゃないか。」

軽く言いながらも、彼は私を抱き寄せ、その唇を重ねてきた。

熱に包まれる口づけに、胸がきゅっと締めつけられる。

「……煌。」

吐息混じりに名を呼び、私はふとずっと気になっていたことを口にしてしまった。

「煌は……妃はいるの?」

問いかけた瞬間、怖さが込み上げる。

彼ほどの人なら、すでに誰かに心を許していてもおかしくない。

後宮には私より美しい人がいくらでもいるのだから。

けれど煌はまっすぐに私を見つめ、静かに首を振った。

「これと言った人は、いない。」

心のどこかで、ほっとした。

まだ若い彼には、妃が何人もいるのではないかと怯えていた。

でも、誰にも心を奪われてはいないのだ。

そして次の言葉が、胸の奥を強く揺さぶった。

「小桃だけだ。俺の心を焦がすのは。」

その真剣な眼差しに、涙が溢れそうになった。

禁忌の恋だと分かっていても、もう彼なしでは生きられない――そう思った。
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