桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして彼は、いつも私を抱いては、夜明け前に去っていく。

「また、今夜来る。」

背を向けるそのとき、必ずそう約束して。

「……煌。」

思わず彼の腕を掴んだ。

胸の奥から抑えきれない言葉がこぼれる。

「私、もう……煌の奥さんになりたい。」

その瞬間、煌はハッとしたように目を見開き、私を見つめた。

沈黙。胸の鼓動が早鐘のように響き、頬が熱くなる。

「……ダメよね。そんなこと考えたら。」

自分で言った言葉に、苦笑いがこぼれる。

彼は金軍の将。王族の妃を娶ってもおかしくはないほどの人。

簪屋の娘に過ぎない私が、隣に立てるはずなどないのだ。

けれど次の瞬間、煌は力強く私を抱きしめた。

その腕は、迷いや理屈をすべて覆い隠すほどに熱く、真剣だった。

「小桃……」

低く名前を呼ばれたとき、涙が溢れそうになった。

禁忌だと分かっていても。

――心の奥底では、彼の妻になりたいと願わずにはいられなかった。
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