桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
翌日。いつもの彼とは少し違って見えた。

「……何かあったの?」

不安を抑えきれず尋ねると、煌は寂しそうに微笑んだ。

「明日からしばらく、来れない。」

胸がズキリと痛む。

「……遠征ですか。」

「……ああ。」

遠征――軍を率いて戦場へ赴くこと。

命を落とす可能性すらある危険な任務だ。

頭では理解していても、心は悲鳴をあげていた。

「煌……」

堪えきれず、私は彼を抱きしめた。

「無事に帰ってきて。お願いだから……」

彼の胸に顔を埋めると、力強い手が背中を撫でる。

「必ず無事に帰る。俺は小桃を残して死ねない。」

その言葉に、張り詰めていた涙が滲む。

安堵と恐怖と、溢れる愛しさ。

全部がないまぜになって、どうしようもなく彼を求めていた。

次の瞬間、煌は私を寝台に押し倒した。

「小桃……離れたくない。今夜はずっと君を感じていたい。」

その瞳に宿る熱と決意に、抗うことなどできなかった。
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