桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「それよりも……小桃を感じていたい。」

低く囁かれ、私は抵抗する間もなく衣を解かれた。

煌自身も鎧のように重ねた衣を脱ぎ捨て、裸の肌を晒す。

目に入ったのは、見覚えのない新しい傷跡。

「……痛くなかった?」

指先でなぞると、胸が詰まった。

「これくらい平気だよ。」

軽く笑う彼に、私は涙をこらえながら傷口に唇を寄せた。

「小桃……愛おしいよ。」

次の瞬間、強い腕に抱きすくめられ、激しく求められる。

「煌っ!」

名を呼ぶたび、彼の熱が体の奥まで響き渡る。

遠征の間に溜め込んだ想いを吐き出すかのように、何度も何度も私を抱きしめ、求めてくる。

私もまた、彼を失う恐怖を振り払うように必死で応えた。

気づけば、東の空が白み始めていた。

朝の光に包まれても、彼の腕は離れない。

「小桃……もう放れたくない。」

その声は深い祈りのようで、私はただ涙を流しながら、彼の胸に顔を埋めた。
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