桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて

第4章 求められる夜伽

そして私は、不思議なことに。

――貴人からさらに昇進を果たし、正式に「妃」となった。

「妃……私が?」

告げられた瞬間、思わず声が洩れる。

喜びよりも驚きが勝ち、胸の奥がざわめいて落ち着かない。

同じ才人から上がってきた縁香が駆けつけてきて、ぱっと顔を輝かせた。

「小桃、すごいじゃない! 妃になれるなんて、めったにないのよ!」

「でも……なぜ私が?」

思わず問い返すと、縁香は首をかしげた。

「さあ? でも、きっと小桃は誰よりも大人しくて、品があるからよ。」

(品が……? 私はただ、かんざしを作って過ごしていただけなのに……)

心のどこかで、煌の姿が浮かぶ。

彼は今も遠征の余韻で忙しいはず。

それなのに、どうして私がこんな位に――。

「妃になれば、皇太子様と会う機会も増えるわ。羨ましい……」

縁香がうっとりと呟く。

胸が締め付けられる。

(私が想っているのは、皇太子様じゃない。煌だけなのに……)

昇進は祝福のはずなのに、心は重く沈んでいった。
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