桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして、その日の午後。

司馬陽がいつになく嬉しそうな顔で私の部屋を訪れた。

「柳妃。よかったですね。」

私は彼を見据え、思わず言ってしまった。

「……煌と恋仲だと、あなたに打ち明けたはずではないですか。」

その名を出した瞬間、司馬陽の表情が固まった。

「……煌⁉」

目を見開き、驚きを隠せない様子。

「あなた、あの方を……煌と呼んでいるのですか。」

「えっ?」

私が戸惑う間に、彼は口元を押さえ、くすくすと笑い始めた。

「……まあ、本当のあの方を知れば、納得がいきますよ。」

「本当の……煌?」

不思議で仕方がなかった。

あの人には、私がまだ知らない顔があるのだろうか。

司馬陽はそれ以上語らず、ただ意味ありげな微笑みを浮かべるだけだった。

胸の奥に小さな不安と期待が芽生え、私は落ち着かなくなった。

(煌……あなたには、隠された一面があるの?)
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