桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
そして夕刻、司馬陽が厳しい面持ちで部屋を訪れた。

「柳妃。伝令にございます。今宵、皇太子様があなた様を所望です。」

「……えっ。」

思わず声が裏返った。

「それは……閨を共にしろ、ということですか。」

震える問いに、司馬陽は静かに頷いた。

「はい。その通りにございます。」

頭が真っ白になった。

煌しか愛せないのに、皇太子に抱かれるなど――。

「まあ!」

隣で聞いていた雪如が、ぱっと顔を輝かせた。

「仕えた早々にお妃様が選ばれるなんて、なんて光栄でしょう!」

「雪如……」

彼女は心から嬉しそうに笑っている。

妃が寵愛を受ければ、その侍女の格もまた上がる。

彼女にとっては主の幸運が、自らの誉れでもあるのだ。

けれど私の胸は重く沈んだままだった。

(どうしよう……煌のことを想いながら、皇太子様の元へ行くなんて……できない。)

笑顔を浮かべる雪如の横で、私は唇を噛みしめ、視線を落とすしかなかった。
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