桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「柳妃。昨夜は……体調が優れなかったとか。」

司馬陽の穏やかな声に、私は小さくうなずいた。

「……はい。」

彼はため息をつき、畳に腰を下ろした。

「本日は、大丈夫ですか?」

真っ直ぐな視線に耐えきれず、私は問い返した。

「……どうしたと言うのですか。せっかく妃になったというのに。」

声が震え、涙が頬を伝う。

「私は……煌しか、愛せません。」

その名を口にした瞬間、胸の奥に秘めてきた想いが溢れ出した。

司馬陽は目をぱちくりさせ、呆気にとられたように私を見た。

「……そんなに、あの方に惚れているのですか。」

私は迷いなく頷く。

「はい。」

彼は深く息を吐き、呆れたように肩をすくめた。

「分かりました。その想い……皇太子様にお伝えしましょう。」

「えっ……!」

驚いて顔を上げると、司馬陽の瞳は真剣そのものだった。

「これ以上、隠しても仕方がないでしょう。」

胸が締め付けられる。

煌に会いたい気持ちと、皇太子に知られてしまう恐怖。

その狭間で、私はただ震えるしかなかった。
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