桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
翌日。

部屋に入ってきた司馬陽は、深いため息を吐いた。

「……どうして会わないのですか。」

冷静な声に、胸が痛む。

私は寝台に身を潜らせ、顔を隠した。

「会えば……皇太子様のものになってしまいます。」

絞り出すように告げると、司馬陽は困ったように眉をひそめた。

「煌に会いたい……」

胸の奥から零れ落ちたその言葉に、自分でも驚いた。

けれど返ってきたのは、冷ややかな声だった。

「忘れてください。」

「……え?」

顔を上げると、司馬陽の瞳は淡々としていた。

「もう将軍は、ここには来れません。」

その言葉に心臓が凍りつく。

「ど、どういうこと……?」

「当たり前でしょう。皇太子様の妃の部屋に、将軍が足を踏み入れられるはずがない。」

突き放すような声音に、私は言葉を失った。

胸にぽっかりと穴が開き、呼吸さえ苦しくなる。

(煌……もう会えないの……?)

強い孤独が押し寄せ、涙がこぼれ落ちた。
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