桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて

第5章 真実の庭園

そしてそれから――皇太子様は、夜に私の戸を叩くことをやめられた。

ほっと胸をなでおろし、つかの間の安心を覚えた矢先だった。

「柳妃。」

司馬陽が静かに部屋を訪れる。

「皇太子様より、庭園にお招きがございます。」

「……庭園?」

思わず息を呑む。

それは、いわば強制的なお見合いの場。

きっと着飾ったお妃様方がずらりと並び、皇太子様に笑みを振りまくのだろう。

「私がいなくても……他のお妃様達がいるではありませんか。」

小さく訴える。だが司馬陽は一歩も引かなかった。

「いいえ。これは皇太子様直々のご指名です。柳妃、あなたが来なければ意味がないのです。」

その瞳は冗談を許さない光を宿していた。

逃げ場などない――そう悟った瞬間、胸がずしりと重くなる。

煌だけを想いたい。けれど皇太子に背を向け続けることもできない。

揺れる心を抱えたまま、私は黙って頷くしかなかった。

(……庭園。そこには、一体なにが待っているのだろう。)
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