桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
煌の腕の中で、私は胸の鼓動を抑えきれなかった。

庭園を渡る夜風が、灯火に揺れて花々を踊らせる。

「小桃……」

低く囁かれた名に、私は顔を上げた。

月明かりに照らされた煌の瞳は、まるで私しか映していないように深かった。

「俺は、もう二度と君を離さない。」

その言葉に、全身が震える。

「……本当に?」

涙交じりに問いかけると、彼はわずかに笑って頷いた。

「誓う。君こそ、俺の唯一の妃だ。」

次の瞬間、唇が重なった。

優しく触れたかと思うと、次第に深く、熱を帯びていく。

冷たい夜気の中で、その口づけは甘く、そして切実だった。

「煌……」

声にならない吐息を洩らすと、彼はさらに私を抱き寄せた。

「この庭園で交わした誓い、誰に何を言われても変わらない。」

夜の静寂に溶けていく口づけは、ふたりだけの契りそのものだった。
< 70 / 148 >

この作品をシェア

pagetop