桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
私は思わず口を開いた。

「……私ばかりが夜伽の番を務めるのは、後宮の秩序を乱してしまいます。」

広間にざわめきが走る。

安妃をはじめ、妃たちの視線が一斉に私に注がれた。

煌はしばらく黙したあと、静かに前へ進み出た。

そして、妃たちの前で膝を折り、ゆっくりと座り込む。

「皆には、心寂しい思いをさせていると思う。」

落ち着いた声が広間に響く。

「だが――今の俺には、小桃しか見えないんだ。許してくれ。」

私は胸が熱くなり、言葉を失った。

(こんな場で、はっきりと私を選ぶなんて……)

だが、安妃は引かなかった。

鋭い眼差しで煌を見据え、声を張る。

「では、私たちは何のためにここにいるのですか!大臣の娘である私でさえ、殿下に一夜も呼ばれたことがございません。」

その場に緊張が走る。

他の妃たちも一斉に頷き、溜め込んでいた不満が一気に噴き出した。

私は息を呑み、煌を見上げた。

――彼は、どう答えるのだろう。
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