Pandora❄firstlove
「俺は、この後どうしたらいいだ?」
「別にのんびりしておけばいいんじゃない?私と、愛を育んだりして!!」
「……聞く俺が馬鹿だった」
「そんな反応しなくても良いじゃーん!!少しは、冗談に乗って!!」
「無気力上等主義の俺であり、こんなカオス状況で呑気なこと言ってられん」
頭を悩ませていたら、ノック音が。
「お二人さん。深夜や。静かに」
「あ、海さん?入ってきてよー!!一緒に話そ!!」
「お前………アッチは注意しにーーー」
「それもそうやな。入らせてもらうわ」と扉を開けた彼。
やたらと恰幅が良く、人柄の良さそうなおじさんが出てきた。
しかも頭がーーー「禿げてる……」。
「先生サイテー」
思わず口をふさいだが、もう遅く相手方に大いに吹き出された。
「兄ちゃん、おもろいわー!!どないしたん?そんな状態で居酒屋で倒れてたの、嘘やないか?」
「そうそう、絶対そう思うよねっ!!嘘に決まってるよ!!」
「……お前は、少し黙ってろ!!」
「やっぱり、息ぴったりやな………永遠の恋人っていうのホントなんやな……」
「え、それは………誰から聞いたんですか?」
嫌な予感がして、ちらりと横を見る。
そしたら、舌を出した彼女。
このバカ野郎。
この親父にも、変なこと吹きやがったな。
「……というか、こんなに深夜なのに騒いじゃいけないだろ」
「まぁ、でもここ使われてない特別病棟やし」
「え?」
「ここは、新しくできる予定の病棟なの。でもこんだけ人がいないとおばけが出たりして。先生気おつけてね。っていうか、守ってよー」
「そんだけ元気なら、守られなくても向こうから避けてくれるはずだ」
「お前さんは、院長に相当目をつけられてるんやのー。普通だったらこんなふうに特別待遇されるはずないのやで?」
でも、どうして俺なんかに?
そんな疑問は、「先生と私は初恋で両思いになってから付き合ってて」と嘘を吹き込む愛に掻き消された。
「嘘を吹き込むな!!」
「甘い恋愛をも出来ない青春時代を、補ってくれたって良いじゃーん!!恋バナをもしてくれないくせに!!」
「恋バナだったら、ワイもあるで」
「え!?!?本当?!?」
「あぁ。娘の帰りを待っているとき、嫁と毎晩ーーー」
嫌な予感がして、すぐさま海さんの口をふさぐ。
「さぁ、さぁ。夜も深い、お前は早く寝ろ」
「海さん大丈夫なの?」
泡を吹いて倒れた海さん。
大丈夫だ。
かろうじて息はしてる。
3つ目のベッドに海さんを寝かせると、俺も眠くなって静かに目を閉じた。
久々に楽しいと感じた。
こんなに、楽しいやり取りを人間と交わしたのは、何年ぶりだろう。
こんな幸せがずっと続けばいいけど、そう長くないのかも。
そんなことを思ったが、これから先しばらくはこの二人と付き合うことになる。
ちょっとした、居場所が出来てしまったのは少し嬉しかった。
*