Pandora❄firstlove
「つまらなーーーい!!!!」
全生徒の耳の鼓膜が破れたって私は構わないという憎しみを込めて、誰もいない裏庭で思いを口にする。
だって昨日から司が全然話しかけてこないし、構ってもくれないし、林檎先生に嫌味を吹き込まれたし、全然最近ついていない。
だからといって中庭に行くと、馬鹿にされて馬が息でも吸っているかのような鼻息をたてられて笑われるに違いないって、直感で理解できるから。
だから人気のない裏庭に避難したのはいいものの、この世の中が塵になって私だけ、地球上で生きいるみたいにーーー無透明、無機質になってるぐらいに恐ろしく、退屈で。
「もうっ、一体何なのよー!!!私が何したっていうのよ!!!神様のケチ!!!」
地獄のようなじんわりと負のオーラが、私の心の内を蝕んで、軈てはこの心臓を一潰ししたら私はこの場に倒れて永遠の眠り姫になってしまうんじゃないかって。
そう理解してしまうのが、とっても怖くて明るさだけが取り柄なのに周りがそれを許さないような状況になってる気がしてとても居心地が悪くて。
アスファルトの上に、濁りきった上水の小さな雫がアスファルトを濡らす。
頭に突かれるような、冷たさは無かったから雨ではないことは理解できる。
ーーーうぅ、だめ!!泣いたら、私の存在意義がなくなっちゃうよ!!
一人でなんで戦ってるのかさえわからないぐらい泣き疲れるぐらいまで泣いて、息を吸う。
「司が、こんな風に突き放すわけないよ。きっと忙しいか、なにか理由があったんだよ」
と言い聞かせる。
でも、世界はどこか薄暗い。
司がいない人生なんて、何だか味のしないご飯のように卵白だ。
司先生は、生徒に人気者でその人気を鼻にかけずーーーむしろ控えめで、素行の悪い女子生徒に鼻の下を伸ばさず冷静に対処する姿をこの私はずっと見てきた。
何回も。
廊下でする違うときも、登校する時も、下校する時も。
どこか人を寄せ付けないちょっとしたプライドはあるけれど、年配のあの面倒くさそうな雰囲気は持ち合わせてなくて押し付けるような空気感もないから、独り身である私は居心地がいい。
事情のある私を、何の偏見の目を向けずに受け入れてくれたこともポイントは高くて、せっかくお友達ができたと喜びたかったのに、この有り様だ。
「何してるの?」
びっくりして、仰け反ったが振り返ると男子高校生がいた。
しかも名前をよく見ると、同じクラスメイト………?
どうしてこんなところに人が?
「だ………だれ?」
「そう…、だよね。俺の事知らないよな。」
爽やか系で鼻にかけることもないような、好青年くんは、1メートル距離を開けて私の右隣に座った。
帰りそうな気配がない。
一回この光景は何処かで見たことがある。
背中に冷や汗がするりと、流れた。
この状況、知ってる………。
前も裏庭で、林檎先生に陰口をたたかれ、嫌な気持ちになって粗末なコンビニサンドイッチを食べていたときだ。
食事の時間が唯一、私の幸福の時間だったのに対して男子が近寄ってきてーーーいきなり告白されたことがある苦い経験。
それも全く知らない人間にされた。
だから、「人間性も知らないのに付き合えないよ」と言ったら。
クラスからハブられてしまった苦い経験だ。
「わ………私、そうゆうの嫌だ!!!」
後味が口の広がった瞬間、立ち上がった。
「………もしかして、日向のこと?」
「………なんで、1年前の出来事を貴方が知ってるの?」
「愛ちゃんが、有名だからね。知らない、眠り姫って呼ばれてること。日向はその後クラスメイトに嘘を愛ちゃんに吹き込んでるのがバレていなくなったよ」
「バーンってね」と手をパチンと鳴らして、打つ。
それも、やたらと笑顔で。
「………あの、要件はなんですか?」
「………要件かー」
「うーん」と、腕組みをして眉を顰める好青年くん。