Pandora❄firstlove
「準備はいいですか?司先生!!」
いいわけないけど……、仕方ない。
「……いいですけど、林檎先生、何故校長まで?」
「僕がいたほうが、司先生と林檎先生の美しさを際立たせられると思って」
ーーー余計なお世話だ。というか、誰のせいだよ………。
音楽が流れ出した。
ステージの幕が上がる。
今この時間は、学校の放課後。
クリスマス当日。
体育館には大きなクリスマスツリーが飾られており、文化祭並みの力の入り具合だ。
女子生徒のスカートは下着が見えそうなぐらい、短く、男子はワックスで髪を固めて女子生徒達を撫で回す。
地獄だ。
こんな生徒たちのために、何で俺がこんなミニスカサンタ姿で踊らなければならないんだ………。
無力思考で引き受けるんじゃなかった。
一週間で振り付けお覚えて、腰を可愛く振るように踊る。
ミーンガールズという映画を忠実に再現したいと謎にこの女は、熱狂していた故に妥協は許されなかった。
校長はそんな女に、気に入られたいと一生懸命踊っている姿が見ていられなかった。
朝起きるときに悪寒と寒気が止まらなかったのはいい思い出だと心のなかでしまいたい。
相変わらず生徒達に爆笑の渦に巻き込まれて、恥ずかしいどころか消えてなくなりたいよえな気持ちになったが、踊りは止められない。
映画を忠実に再現するように、ラジオを俺が蹴る役をさせられた。(っていうか、林檎先生がやれよ)
仕方なく目の前にある代わりの人形に向かって、ラジカセを蹴る。
だけどーーー。
「あれ……?これなんだ?」
人形をどかす、確かあれはーーー和也という生徒が外してーーー。
そいつの顔にクリーンヒット。
俺達は本当に凍りついた。
曲が止まったからじゃない。
本当に生徒を蹴り飛ばしてしまったからだ。
ーーーヤバくない?ーーー
ーーあれ事故だぞ?ーーー
ーー先生が生徒を?ーーー
どうしようかと悩んでいる林檎先生に「歌ってください。俺がなんとかしますから」とお願いを出す。
林檎先生はコクリと頷き、ジングルベルの英語を歌いだし校長と踊りだす。
俺はどうにもヤバいと思って、床に着地して急いで鼻血を出している和也に肩を貸してーーー保健室へ。
「お前、あの人形に近づくなって書いてあったの知らなかったのか?」
「あんな下手くそな人形触りたくなって、気になっちゃう性分なんだよね」
ハハハと笑う彼は、怒りの感情は見当たらなかった。
良かったと思う反面、どうしてくれるんだ明日から俺は誂われる地獄を味わうのにという恨みのような感情も持ってて。
「まぁ、取り敢えず鼻血を処置だ」
彼の鼻にティシュを詰めて、横にならせる。
「確かお前は、愛に告白したんだってな」
「お!!嫉妬?」
「何でそうなる」
「いつも仲良さそうにしてるから、付き合ってるって俺思ってた」
「先生も生徒が付き合うわけ無いだろ……って、何でお前は俺の名前を知ってる?」
「それはこちらのセリフでもあるんだけどなー。俺は、先生が有名人だから。先生は?」
まさか愛に「愛の告白をされちゃったかもーーー!!!」とずっと留守電で自慢されただなんて言えるわけない。
「学校の噂だ」
「ふーん、変だな」
「そう思えばいい」
「それで、実際の所どうなの?」
「何がだ?」
「俺と、愛の仲をどう思ってる?」
「どう思ってるって………別に」
別にと言いかけて、言葉に詰まった。
本当に、別にと言えるのだろか。
どうしてかはまだわからない。
「お、言えないってことは?」
「お前こそ、どうしてそんな事を?」
「俺、本気で愛ちゃんのこと好きだから」
好きという言葉を聞いた瞬間、薬品を片付けていた手がピタリと止まる。
「そうか、それなら好きにすればいい」
「貴方は、どんな理由で愛ちゃんに近づいてるの?」
「それを言う必要あるのか?」
「大有りだよ。周りが言ってるよーー愛ちゃんを遊んでるみたいだね、司先生はって」
「言わせておけばいい」
「薬品の手が止まってるくせに?」
鼻で笑った。
「必死に敵対心を燃やすなよ。ガキ臭い」