Pandora❄firstlove
決別させる悪魔……? 和也目線
「和也、結局どうだったんだよ?」
「愛ちゃんガード固くて………心開いてくれないんだ………」
友達とそんな事を愚痴りあって、分かれた後。
俺は空を見上げる。
どんよりと曇った空は、皮肉にも純粋な雪が降り注ぐ。
「俺の何が駄目なのかな………」
いや、確かに司先生のようにイケメンでもないし、頭もさほど良くないのは難点何だろう。
だけども、あの先生よりも愛ちゃんのことを誰よりもずっと見守ってきたつもりなんだ。
1年生の頃から、体の弱い彼女を怖がらせないように不用意に近寄らずにいたつもりであったし。
何より、かっこよくなるように、ダイエットまでやってーーあの不届き者の日向ってやつをぶちのめしたのも俺だった。
そんな学園ニュースには疎い愛ちゃんは、一向に俺に振り向いてくれる様子はなくて。
「辛すぎるんだけど………」
と愚痴を吐かずにはいられない。
「何か悩んでるようね」
雪が頬についた時、その冷徹な声に導かれるように振り向いた先にいた。
「林檎先生……?」
いつも愛らしいことで有名な、保健室教師林檎先生がそこにいた。
だけども、何だかいつもより雰囲気が違う。
どうしてだろう。
「悩んでるのは、悩んでるけど………先生今日雰囲気違う………」
すると、林檎先生は笑った。
何だか小馬鹿にするような、舐め回すようなーーーそんな笑い方。
「まぁ、まぁ、そんな恋愛偏差値で司先生から、愛を奪おうなんてーーー君も甘いのね。他の男と同類ね」
言っている意味は理解できなかったけれど、馬鹿にされたことはわかる。
「先生………何のようですか?」
わざわざ、こんな馬鹿にする相手に近寄ってくるということは、なにか理由があるのだろう。
俺もそこまで馬鹿ではない。
「話が早いわね、単刀直入に言うわ。私と手を組んで」
「は?」
「司先生と愛を引き離すのを手伝ってほしいの」
ポツポツと雨が降ってきて。
俺は引きつられるように、保健室に入り事情を聞く。
外は直ぐ様、土砂降りになって積もっていた雪は泥水へと姿を変える。
「何で………そんな事を?」
直ぐ様林檎先生は椅子に座って、マニキュアを取り出しピンクと思いきや、真っ赤なルージュを爪に塗る。
「私、嫌いなの。愛が」
「はぁ」
「あんな何にもしてない女の子が、ハイスベックであるイケメン公務員様に余裕で気に入られてることが、目障りなの」
「それって、嫉妬っていうんですよ。そんな引き離す余裕があったら、実力で勝負してくださいよ」
馬鹿馬鹿しいと思った俺は、ドアノブに手をかける。
「貴方は中の下」
「は?」
「恋愛するにあたって、駆け引き偏差値よ」
「人の事をあんた、さっきから何で………」
「じゃあ、貴方今までで私がこんな卑しいことを考える女だと見抜けていたのかしら?」
林檎先生に図星を突かれてしまって、言葉が詰まる。
あぁ、確かに思わなかった。
今日の今まで、全然。
こんなあざとくて、最低なことを考える先生なんかじゃないって俺は思ってた。
「そんな状態で恋愛を戦略無しで進めていたら、司に取られるわよ?いいの?」
「何であんたにそんな事………」
「あの人は、すでに私の本性に気づいていたから。出会ったときからすでに」
「!?」
「そんな、鋭くて続々するような男は、女は誰だって惚れるに決まってるわ」
「俺が………負けるって言いたいのか?」
「ええ、そうよ。貴方は、確実に私と出を組まなかったら負ける。それだけは言えるわ。だって今だってーーー」
ーー愛と隣で歩いていないじゃないーーー
その言葉は俺の心のすべてを抉った。
まるで鋭いナイフで、心臓に突き立てられているかのような痛み。
「私、可哀想な貴方を助けてあげたいって、思ってる反面もあるのよ。悪魔みたいだけどね」
「何を……偉そうに」
「あら?じゃあ、必要以上に愛を追いかけ回していた日向をぶちのめしたのは、何処の誰だったのかしら?」
「それは………」
「それに、何のためにダイエットしてそこまで必死になれたのかしら?その欲望を叶えなくていいの?頑張ってきたのに?」