この関係、治療につき~変人伯爵さまはメイドのわたしにご執心(ただし、研究材料として)~
「人には人それぞれの成長スピードがある。焦ってもいいことなどない。キミならわかるだろう」

 彼は立ち上がる。ローブについた土を手で払いつつ、大きく伸びをした。

「などと言ったところで、キミは真面目だからいろいろと考えるんだろうな」
「……全部、お見通しですか」
「まぁな。しかし、これだけは覚えておけ。――私はキミになにかをしてほしいと拾ったわけじゃない」

 言葉が胸にぐさりと刺さった。

「ただ、放っておけなかっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「は、い」
「キミは私の役に立ちたいというが、それは決して働くことだけではないんだぞ」

 そんな言葉を残して、彼は屋敷に戻っていった。屋敷内からマイルズさんの怒った声が聞こえる。

 また、仕事かなにかから逃げ出したのだろうか。

(わたしになにかをしてほしくて拾ったわけじゃない……か)

 放っておけなかっただけ。ということは、あのときの私は相当ひどい有様だったのか。

「まぁ、当然か。実家から勘当されて、行く当てもなくて。どうしたらいいかわからずに、さまよっていたんだから」

 彼に出逢った日。私は人生で最大の絶望を味わっていた。

 そのきっかけは――婚約者からの婚約破棄されたことだった。
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