この関係、治療につき~変人伯爵さまはメイドのわたしにご執心(ただし、研究材料として)~
 アレクシスさまいわく、彼には想い人がいるらしい。相手は有名な舞台女優。彼女と結婚するために、わたしは邪魔なのだと。

「わたしとの関係が解消されたら、困るのはアレクシスさまでは?」

 だって、わたしと結婚できないと、彼の家は援助を打ち切られる。きょとんとしつつ問うと、彼は自信満々に笑った。

「そこに関しては問題ない。この婚約解消の原因は、お前の不貞だと言ってあるからな!」
「……不貞など、した覚えがありません」

 さすがのわたしでも、我慢できなかった。自然と声が低くなる。アレクシスさまは、ちょっとだけ怯んだ。けど、すぐに気持ちを持ち直したらしく、わたしを強くにらみつける。

「お前の不貞を証言するやつがいるんだよ!」

 アレクシスさまが手をたたくと、一人の男性がやってくる。身なりのいい男性に、わたしは見覚えがあった。

(あの人、確かこの間……)

 街で道を聞いてきた人だ。

「私は彼女に誘われました」

 堂々と嘘っぱちを宣言する彼。ただ、同時に腑に落ちることもある。

 異様に距離が近かったのは、このためだったのか。

「というわけだ。わかったな」
「わかったか、わからないかで問われると、わかりませんね」

 唯一わかることは、この男の人が嘘をついているということくらいだろう。
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