この関係、治療につき~変人伯爵さまはメイドのわたしにご執心(ただし、研究材料として)~
「わたしは神に誓って不貞など働いておりません」

 堂々と宣言する。しかし、わたしの言葉をアレクシスさまは鼻で笑った。

「察しの悪いお前に教えてやる。周りを見てみろ」

 彼の言葉に周囲をぐるりと見渡す。

 こちらを見つめるご令嬢方の視線は……冷ややかだった。

 そして、男性たちの視線には嫌悪感が宿っている。

「誰一人として、お前の味方はいない! どれだけお前が無実を訴えようと、無駄なことだ!」

 アレクシスさまが両手を大きく広げる。

 ……あぁ、そうか。ここまでくると、さすがに鈍いわたしでもわかる。

(わたし、罠にかかっちゃったんだ)

 アレクシスさまは、社交好きであちこちにコネがある。外面はいいので、周囲からの人望もある。

 比べ、あまり社交好きではないわたしには、コネなどない。どちらの言葉を信じるかと言えば――絶対に、前者となる。

「お前の不貞はシーリー男爵にも報告させてもらう。今後の処遇を楽しみにな」

 彼はそれだけを言って、わたしの前から立ち去った。

 同時に、周囲の人たちがはけていく。何人かが、わたしを見てこそこそと話している。

「そんなふしだらな人だとは思わなかったわ。アレクシスさまが可哀そう」

 どこかの令嬢がささやいた言葉に、胸が強く痛んだのは気のせいじゃない。

「ということは、あのどんくささは演技なのか? 本性は狡猾な女狐なのかもしれない」
「だったら、大層な名女優ですこと」

 面白おかしくうわさされている。さすがのわたしでも、この場の空気に耐えられなくて――気づくと、逃げ出していた。
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