この関係、治療につき~変人伯爵さまはメイドのわたしにご執心(ただし、研究材料として)~
「勘当されたということは、今後は平民かぁ。生きていけるかな」

 どんくさいわたしが、仕事を見つけることなどできるのだろうか。考えるだけで気持ちが暗くなる。

 大きくため息をついたとき、視界の端に光が入った。それは徐々に近づき、大きくなる。

 馬の蹄と石畳がぶつかる音がするので、馬車がこちらに近づいているのだろう。

「――と、邪魔にならないように道の端に寄らないと」

 立ち上がろうとして、脚の痛みのせいで場に崩れ落ちる。それでもなんとか立ち上がろうとしていると、少し先で馬車が止まった。

 御者がおり、灯りを持ってこちらにやってくる。彼の表情はとても心配そうだ。

「どうかなさいましたか? お困りがございましたら、お手伝いいたしますが……」
「い、いえ、特には!」

 困っているといえば、困っている。しかし、この人は赤の他人である。

 わたしの事情に巻き込みたくない。

「こんな時間にこちらにいては危ないです。お屋敷までお送りいたしましょう」

 親切心で言っていることは、よくわかっている。だけど、わたしからするとありがた迷惑だった。

 ……どう回答したらいいか、わからないんだもの。

(実家を勘当されたので、行く当てなんてないんです――と言うべき?)

 やっぱり、言えるわけがない。
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