私は遠くから
その後、少し経ったあとの休憩室。夕奈は一人、ぼんやりとスマホを眺めていた。
 そこへ陽介が軽い足取りでやってきた。

 「夕奈さん、ちょっと相談いい?」
 「うん、どうしたの?」

 陽介はさっと座り、真剣な表情で言った。
 「俺さ、夕奈さんがあいつと遊ぶための作戦、考えてみたんだ」

 夕奈は少し笑う。
 「作戦?」
 「そう。どうやって誘うか、どうやって距離を縮めるか。」

 二人で紙にメモを取りながら、あれこれ案を出す。

 「じゃあ、まず共通の趣味を理由に誘うのはどう?」
 「いいね。でも自然に誘える言い方が難しい……」
 「じゃあ、俺が間に入るよ。軽く『今度一緒に行かない?』って言わせるとか」

 夕奈は胸が少し高鳴る。
 「できるかな……やった、遊べるかも!」

 陽介も笑った。
 「焦らず行こう。最初は小さなことからでいいんだ」

 数日後、陽介のアドバイス通り、夕奈は颯真に声をかけた。
 「ねえ、今度さ、遊園地行かない?」

 颯真は少し驚いた顔をしたけれど、やがて笑った。
 「うん、いいね。行こうか」

 夕奈は心の中でガッツポーズ。
 ――やった。ついに遊べる。

 その夜、帰り道の街灯の下で、夕奈は小さく呟いた。
 「よし、頑張ろう……!」

 陽介は隣でにこりと笑う。
 「夕奈さんが楽しめるように、俺は全力でサポートするよ」

 その言葉に、夕奈の心は少しずつ軽くなり、希望で満ちていった。
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