社畜と画家は真っ新なキャンバスに何を描く
「理沙さん。今日のワークの講評聞いてもいい?」
彼との昼食では、毎回ワークの講評というものをやっている。彼は美術の世界で生きているため、講評という表現が分かりやすいらしい。私も不便はないため、その表現を採用している。
「今日は国語では文学者を、社会科では平安時代の歴史の宿題でしたね。見させてもらった感じ、重要な所はきちんと押さえることができていました。ただ、年代の前後で間違えがちだったので年表を使いながら復習してみましょうか」
そう伝えると、悔しそうにしながらも元気に頷かれた。
「しっかり見てくれてありがとう。やっぱり社会科の方が苦手だな~。覚えるのが苦手。正直、亡くなった年よりも、誕生日を知りたいかな」
「その気持ちは分かりますが、亡くなった年が分かるのって意外とすごいことなんですよ」
「そうなの?」
きょとんと首を傾げる市野さん。純粋に興味に満ちる瞳は、キラキラしている。
「はい。その人が死んだ後に、それを書き残してくれた人が居るということなんですから」
「たしかに」
素直にこちらの意見も聞き入れてくれる辺り、素直な人だ。勉強したいという意欲を強く持っているという部分もあるかもしれないが、それにしても勤勉だ。