社畜と画家は真っ新なキャンバスに何を描く
「お待たせ〜」
そんな声と共に、目の前に料理が運ばれた。野菜炒めとわかめスープ。湯気が上がる料理は輝いてみえた。
くぅぅぅぅ
またまたお腹が鳴り、反射で押さえる。でも鳴ってしまったものは取り消せない。顔が熱くなるのを感じる。
「ははっ、熱いから気をつけて」
そんな言葉と共に箸を渡される。割り箸なのは彼なりの配慮だろう。
手を合わせてからいただく。確かに言われた通り熱いが、それ以上に絶妙な味付けに泣きそうになる。
人の手作りを食べたのはいつぶりだろうか。
「美味しい?」
「…はい、とっても美味しいです」
「それは良かった」
嬉しそうに笑う彼の顔は、やはりべったりと汚れている。でも、今ならその汚れの正体が分かる。
「顔に絵の具ついてますよ」
「え、まじ?」
自分の頬をつついて示すと、彼も真似て自分の頬を触った。そして、手についた乾いた絵の具を見て顔を顰めた。
「本当じゃん。…しかもだいぶ前に使った色だし。……気にせず食べてて。顔洗ってくる」
怠そうに立ち上がった彼はそのまま洗面台があると思われる方に歩いて行った。