忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~

 ベッドに入って静かに息を潜めていた。

 スマホも触らずに、ひたすらに天井を見つめる。ベッドからは消臭剤の匂いしかしない。

 最後に時間を確認した時、スマホには02時33分と表示されていた。

 (お風呂も入らずに部屋で寝落ちしたのかな… いや、でもあんなに濡れてたし、間違いなく風邪ひくよね)

 ずっと緊張状態だと精神的に疲弊してくる。お酒の影響もあって段々と瞼が落ちる。ここまで粘ったのに、


 ガチャ


 扉の開く音に目が覚めた。待ちに待った音に、身を固める。

 フローリングを歩くスリッパの音に、何かの物を運ぶ音。耳を澄ましていると、浴室に向かう音が聞こえた。

 その音からたっぷり5分。

 (よし)

 ベッドから起き上がり、薄く扉を開ける。シャワーの音が聞こえることを確認してから、静かに部屋を出た。そして、向かいにある圭吾がいた部屋の扉前で座り込む。

 お酒が回りに回り、眠たくて仕方ない私が考えた作戦は、実に単純明快なもの。

 圭吾が部屋を出た隙を見て、その部屋の扉前で座り込む。強制的に部屋に戻れないようにして、話し合いの機会を得ようとするものだった。正直、これぐらいしか策が思いつかなかった。圭吾は頭がキレるし、基本的に一枚上手なことが多い。


 (迷惑なことは分かってる。面倒なことしてる自覚もある。でも、)


 眠気に限界のきた私は、座り込んだまま眠ってしまった。

< 14 / 22 >

この作品をシェア

pagetop