忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~

 「_____」

 誰かに声をかけられている。ゆらゆらと揺れる身体に目を覚ませば、そこには圭吾がいた。いつの間に寝ていたのだろう。

 声をかけようと顔を上げた時、彼は私のおでこに思いっきりデコピンを打ち込んだ。

 「いっっった!!!!」
 「目ぇ覚めたか?」

 悪戯が成功した子どもの様な笑顔で彼は笑った。ゆるい服を着て、タオルを首にかけている所から、お風呂上がりなのだろうと察する。

 「覚めた…なんなら、酔いも醒めた……」
 「そりゃ良かった。んじゃ、こんな所で寝落ちしてないでちゃんとベッドで寝ろよ。俺ももう寝るから」

 立ち上がった彼は、さり気なく手を差し出してくれる。その手を取って立ち上がったところで、なぜ自分がここに座っていたのかを思い出した。

 「あ、待って!」

 思わず取った手を強く握ってしまう。しかし彼は顔を顰めることなく、きょとんと首を傾げた。

 「どうした?」
 「…ちょっと話をしたいんだけど、駄目かな」

 ほんの一瞬、沈黙が広がった。その間できっと圭吾は沢山のことを考えたのだと思う。

 「そのために、ここで寝てたのか?」
 「起きてるつもりだったんだけど…いつの間にか寝ちゃってた」
 「そんなに眠たいなら明日でも話は聞く。……って言いたいところだけど、そういう感じではなさそうだな」

 圭吾の言葉に何も返せずにいると、彼は私の手を引いてリビングに通じる扉を開けた。電気の消された部屋には、雨音だけが響いている。しかし圭吾は電気をつけることなく、私と共にソファーに腰を下ろした。


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