忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~
「お茶いるか?」
「ううん。大丈夫」
「分かった。じゃあ、早速だけど話をどうぞ」
部屋の電気を点けない部分や、向かいじゃなくて隣に座ってくれているのは、彼なりの配慮だろう。顔が見えない方が話をしやすいと考えてのことだと思う。山口圭吾はそういう人だ。さり気ない気遣いができて、どんな人でも蔑ろにしない。
だからこそ、あからさまに私のことを避けた理由が気になった。
「この家に私が上がってから何か変だよね。私、何かしちゃった?」
思い切って話を切り出す。
本題中の本題。でも回りくどく聞きたくなかった。
「……変?」
全く自覚がなかったのか、隣からは純粋な疑問の声が上がる。無自覚だったのか。
「私と一緒の部屋にいようとしないし、さっきも自分の部屋から出てこなかったじゃん。…避けてた、よね?」
「ちが、」
「私たち、友人でしょ?素っ気ない態度とられると、その、もやもやするというかさ、」
寂しいとは言えなかった。圭吾に今、付き合っている人がいる可能性も考えたが、そもそも恋人がいるなら私のことを飲みに誘ったりはしないだろう。それに、家にも上げないはず。私と付き合っていた時も、そういう部分には徹底的に気を遣ってくれていた。
だからこそ、避けられている理由が分からなかった。
尻すぼみの言葉が消えた後も、圭吾は黙ったままだった。ずっと静かで、寝てしまったのかと思ったほど。
「…まず、避けてごめん」
ぼそりと圭吾は呟いた。その声は、いつもの明るさとは真逆の酷く掠れたものだった。