忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~
「どうやって振る舞えばいいのか、正直分からなくなったんだ。家だと気が抜けて、全部言いそうになるから。だから無理矢理距離を取った」
「? どういうこと?」
隣から聞こえるのは、ソファーの軋む音。そして、細く長く吐かれる息。
「ここだけの話にしてくれる? 雨が上がったら全部綺麗に忘れるって、約束してくれるなら話す」
雨音は未だに続く。終電を逃した先のアディショナルタイム。そんな奇跡に奇跡が重なった時間に起きたことを、夢にしてしまいたくない。
・・・でも、それで知りたいことが知れるというのなら、
「分かった。全部忘れる」
「言質、取ったからな」
彼は立ち上がるとカーテンを開けた。そして雨が降っているのを確認すると、再び隣に戻ってきた。
「俺は、友人に戻りたくなかった」
低く低く、唸るような声。それは、今まで一度も聞いたことのない、圭吾の本音だった。
「最初は気の合う友人だと思った。でも気が付いたら目で追っていたし、隣に立つなら自分がいいと思うようになった。俺は、周囲からの後押しがなくても、由衣に告白するつもりだったよ。でも、逃げられたくなくて、あんな告白に……あー、違う。言い訳をしたかったわけじゃなくて、」
特別な愛の告白ではなく、一種の提案のような言葉で私たちの恋人関係は始まった。圭吾からの提案に疑問を持ったことは無かったが、本人はずっと気にしていたらしい。
「恋人らしいことは沢山していたし、不満に思わせることは何もなかった、と俺は思ってる。…なのに、由衣は急に『友人に戻ろう』って、、付き合っていた時のことを思い出し続けるのが苦しくて、ここに引っ越した」
暗闇の中、圭吾はこちらを向いた。暗闇でも分かるほどの視線に射抜かれ、身じろぎ1つできない。